1月10日。
今日はあいつに会いに行こう。
・*・―――・*・―――・*・
俺、渡江ジュンヤ。
中学2年生。
俺はいつも1人。
嫌われてるんじゃなく、
俺が遠ざけた。
誰かといると思い出して、
泣きそうになるから。
あれはちょうど1年前の今日。
初雪が降った日だった。
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カヤ「ジュンヤ、おはよっ!」
朝早く、隣の家の幼馴染み、
清原カヤがやって来た。
カヤ「ねえ、早く遊びに行こう!」
カヤが無邪気に笑って走り出す。
ジュンヤ「おーい、カヤ!
走ると危ないぞー!」
カヤ「大丈夫だって!
ほら、早くー!」
俺はカヤのことが好きだ。
けど、カヤはただの幼馴染みとしか
思っていないだろうな。
あんな事になるなんてわかってたら、
俺はもっと早く気持ちを伝えたのに。
気づいた時には遅かった。
ジュンヤ「あ、カヤ! 上!
危ない!」
カヤ「え? 上?」
カヤの頭上にあった、
街路樹に積もった雪が
カヤの体を押しつぶした。
今、助ければまだ、間に合う。
そう思った時、
嫌な音が聞こえた。
雪で滑った車が
雪の山に突っ込んだ。
雪が赤く染まる。
ジュンヤ「カヤ! カヤ!」
雪の中、赤い血に染まったカヤを
抱きかかえた。
カヤ「・・・ジュンヤ・・・
・・・私・・・もう1度・・・雪遊び・・・
したかったけど・・・無理みたい・・・」
ジュンヤ「そんなこと言うなよ!」
カヤ「・・・ジュンヤ・・・ごめんね・・・
・・・もっと・・・ジュンヤと・・・
いたかったのにな・・・」
俺の腕の中でカヤは
最後に笑った。
俺が1番好きな表情だ。
カヤ「・・・ジュンヤ・・・
大好きだよ・・・」
ジュンヤ「カヤ! 俺もだよ!
カヤ!」
カヤ「・・・ありがとう・・・」
カヤは最後に寂しそうに微笑んで、
意識を失った。
・*・―――・*・―――・*・
学校からの帰り道。
俺はカヤのお墓がある、
墓地に向かう。
今日はカヤが亡くなって1年。
あとでカヤの家にも寄って、
おばさんに挨拶しよう。
お墓に行くとすでに家族が
来たのだろう。
墓石がピカピカになっていた。
俺は構わず、
線香と花をお供えし、
墓石を丁寧に拭いた。
去る前にゆっくりと手を合わせた。
胸の下あたりを
空気のような何かが
すうっと通り抜けた。
ジュンヤ「カヤ・・・?」
・*・―――・*・―――・*・
カヤ「ジュンヤ。ジュンヤ。
起きてよ、ジュンヤ」
懐かしい、
カヤの声が聞こえる。
目を開けると柔らかく微笑む、
あの時のままのカヤがいた。
ジュンヤ「カヤ?」
カヤ「そうだよ。久しぶりだね」
驚いて目を擦ったけど、
カヤは微笑んだまま、そこにいた。
ジュンヤ「なんで・・・カヤがいるの?」
カヤ「えへへ。
ジュンヤの夢の中に来ちゃった。
ジュンヤに伝えたい事があって」
ジュンヤ「伝えたい事・・・?」
カヤの手が頬に触れる。
カヤ「笑って。ジュンヤ、
私が死んでから、笑ってないよ。
周りの友達と笑っていて」
ジュンヤ「でも・・・」
カヤ「私のせいでジュンヤが
変わっちゃうなんて、嫌だ。
前と同じ、ジュンヤでいて」
頬から、滑り落ちるように
手が離れる。
カヤ「それが私の最後のお願い」
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あれから、数日後。
俺はたくさんの友達と
毎日、楽しく過ごしている。
☆END☆