3000年、魔法があるこの世界。
少し前までは
科学がとても発展していた。
発展しすぎたのが良くなかった。
人工知能、人間の最悪の敵に
なってしまった。
モンスターの形をしたものが
次々と人間を襲っていった。
人工知能は強い。
だから、魔法が使えるものが
たくさんの犠牲を払って
人工知能に対抗してきた。
しかし、魔法が使うことができる人間は
人口の約3パーセントしかいなかった。
泉口ミアは火を操ることができた。
そのため、人工知能討伐隊に入った。
両親の反対も押し切って。
彼女は、とても優秀だった。
討伐隊には成績によってランクが分かれおり、
SクラスからFクラスからまであった。
ミアはAクラス。
しかし今日、実力が認められ、
Sクラスへの昇進が決まった。
・*・―――・*・―――・*・
?「泉口美愛、
Sクラスへの昇進を認める」
この人は雨宮翔先輩、
最強って言われてる。
私はずっとこの人を追いかけてきた。
先輩に追いつきたかった。
あの日から、先輩を守れるような人に
なりたいと決めた。
*。・ 3年前 ・。*
入隊したばかりの私は、
モンスターと遭遇した。
モンスターは氷属性だった。
私を殺そうとした。
火で対抗しようとした私は
モンスターの背後に回り込もうとしたとき、
石につまずいてしまった。
痛恨のミス。
鋭い氷の針はこちらに大量に
向かってくる。
ミア「あぁぁぁぁ!!」
その時だった、
光が見えたかと思うと、
モンスターが消滅していた。
すると、誰か現れた。
先輩だった。
話したことはなかったけれど、
私は彼を知っていた。
最強。
そう言われていたから。
でも、とても冷たいらしい、
心がないってよく聞く。
だから、少し怖かった。
カケル「おい。
いつまでそこで泣いている。
はやく立て、死ぬぞ」
私、泣いてた。
先輩が来てくれて安心した。
言葉は冷たかったけれど、
目つきは怖かったけれど、
優しさを感じた。
それから、先輩をずっと
追いかけていった。
先輩を見つめるたびに
分かったことがある。
私は知ってますよ、先輩。
先輩がたくさんのものを背負っていること、
本当はすごくやさしいことも。
見たんです。
仲間が襲われて、血まみれになっていた時、
先輩がその手をやさしく握っていました。
お前はよくやってくれた。って、
守ってやれなくてすまないって。
私たちはいつも先輩に守られてきました。
その時から、私も誰かを
守れる人になるって決めた。
強くなりたい。
もっと強くなって、
あなたを守れるような人になりたい。
そばにいられるような人になりたい。
そう思ったんだ。
そして今日やっと、先輩がいる
Sクラスに入ることができた。
今日も、討伐に向かう。
絶対、死んだりしない。
生きて帰ってくる。
先輩に認めてもらいたい。
カケル「右に2体。
左に3体、泉口と秋田は右へ。
中島と俺は左に行く。
火属性だからな!」
先輩の指示が聞こえると、
私とシオリは右に向かう。
シオリは親友で、どんなことも2人で
乗り越えてきたんだ。
シオリと2人なら最強。
どんな相手でも倒せる!
たおせる・・・
ミア「シオリィぃ!!!!!」
一瞬だった。
シオリの心臓めがけて
炎の矢が突き刺さった。
シオリは倒れた。
私の中で何かが切れた。
私は狂ったように、魔法を繰り出した。
1体、2体とモンスターは
倒れていった。
下を見ると血まみれのシオリ。
ミア「シオリ! シオリィ!
ねぇってばぁ。
ねぇ、返事してよ。
ねぇ、う、うあぁぁぁぁぁぁ」
嘘だよ。
シオリが死んだなんて、嘘だよ。
嘘って言ってよ。
シオリ返事してよ。
いつもみたいに笑ってよ。
シオリ・・・
カケル「泉口! どうし!?
秋田は息はあるのか?」
一瞬驚いたような顔したけど、
またいつもの鋭い瞳に戻った。
何で、そんな平気そうな顔なの?
ミア「あ、ありまぜん」
私は涙が止まらなかった。
ずっと近くにいたシオリが
死んでしまった。
シオリともっとしたいことがあった。
生きていて欲しかった。
その夜、私は先輩に呼ばれた。
カケル「秋田の死は
お前にとって悲しみだろうが、
私情は捨てろ」
どうして、そんなこと言うの?
先輩は悲しくないんですか。
私は耐えられなくなって、
尊敬していた先輩は
こんなにひどい人だったのかと。
優しいと思っていたのは
私の勘違いだったのかと。
先輩に言い返してしまった。
ミア「どうしてそんなこと言うんですか。
シオリが死んで悲しくないんですか。
い、生きてて欲しかったって思わないんですか。
シオリは、シオリは!」
私は泣いてしまった。
シオリの死がこんなにも痛い。
苦しい。
カケル「私情を捨てろ。
無理だよな。俺もそうだ。すまない。
本当は俺も私情の塊でしかない。
いつも考える。
もっと、早く行っていたら助けられたんじゃないか。
死なせなくてすんだんじゃないかって。
でもな、お前も秋田もわかっていたはずだ。
この討伐隊に入った時から、死と隣り合わせだ。
それは避けられない。
俺にはわからない。ずっとそうだ。
どんな道を選んだとしても、絶対、誰か死んでいくんだ。
何が正しいかなんて、分かんねぇよ。
気持ちを押し殺して、死んでいく仲間を
見送ることしかできなかった。
生きていてほしかった仲間なんて、
助けてあげたかった仲間なんて、何百人といる。
最強なんて呼ばれても、私情も捨てきれない、小さな男だ」
相変わらず、目つき怖いし、全然笑わないし、
無愛想だけど、不器用に発したその言葉は、
すごく優しかった。
私情を捨てる。
その言葉は私を、気遣う言葉であったことに
気づいた。
やっぱりあなたは優しい人だ。
最低だなんて思ってしまった私が
恥ずかしい。
もう絶対迷わない。
あなたを信じる。
あなたを守りたい。
そばにいたい。
ミア「先輩はもっと、笑ったほうが
いいと思いますよ」
怒られるかもしれない。
でも、こんなこと言って先輩は
許してくれるだろうか。
失礼なこと言ってしまった。
カケル「・・・俺はいつも笑ってるぞ」
思いもよらぬ返事。
ミア「見たことありませんよ?
いつ笑ってるんですか?」
つい聞いてしまった。
でも正直気になる。
いつも、鋭い瞳で、無愛想な顔で、
冷たい言葉を発しているのに。
カケル「例えば、お前が鼻歌歌いながら、
魔法装置を掃除しているとき。
お前が失敗して、ストレス発散? で
大声で、寮で歌っているとき。
お前が筋トレしながら、読書してるとき。
・・・お前がうれしそうに笑った時」
えっつ。
なんで私のことばっかり言うの?
そんな嬉しくなるようなこと言うの?
ミア「先輩見てたんですね。
誰にも見られてないと思ってたのに」
親友を失った私を励ますために
言ってくださっただけよ。
変な期待をするな、私。
ミア「先輩、お願いがあります」
そばにいると溢れだすこの気持ち。
カケル「なんだ?」
言ってみようか、
やっぱりやめよう。
ミア「やっぱ、秘密です。
先輩、私死にませんから」
*。・ 1週間後 ・。*
第一エリアに
大量のモンスターが現れた。
情報によると、かなり高レベルの
人工知能を持ち合わせているという。
このモンスターを討伐するために、
チームが構成される。
私は行く。
かなり危険な戦いになることは
分かっている。
誰かが行かなくちゃ、
みんな死んでしまう。
ミア「先輩、私
特別討伐隊に入りたいです」
この特別討伐隊に入るには、
ランクリーダーの許可が必要だった。
カケル「もっとよく考えろ」
どうして、
すぐ許可してくれると思っていた。
ミア「私の力が足りないということでしょうか」
不安で聞いた。
守りたい。
あなたも、この特別討伐隊に入るのでしょう?
カケル「お前は優秀だ。
しかし、だめだ」
何で?
私は足手まといですか?
ミア「誰かがやらなくちゃいけないんです!!」
カケル「なら! なら、・・・」
ミア「ならなんですか!?」
私じゃだめなんですか?
カケル「なら、他の誰かがやればいい!
お前は死ぬな」
えっ。
なんで、あぁ泣きそう。
そんなに心配してくれたんですか。
私は、あなたにまた、
重いものを背負わせてしまってるんだな。
ミア「私は死にません。
約束します」
ちゃんと、笑えていますか先輩。
ただ、あなたを守りたい。
・*・―――・*・―――・*・
カケル「右に976体、左に478体、
属性は水属性だ。
絶対生きて帰るぞ!」
私もSクラスです。
死んだりしません。
左に54体、私のところにいる。
ちょっときついな。
大丈夫。
水属性、私の炎が打ち消されていく。
どうしよう。
死んだりしない。
先輩と約束した。
絶対生きて帰る。
24体倒した。
大丈夫。
大丈夫。
その時、ふと目に入ってしまった。
男の子が泣いてる。
なんで、
ここはモンスターのいるエリア。
一般の子供は避難したはず。
男の子に水攻撃が向かっている。
助けないと。
ミア「危ない!!」
気づいたら、
体が勝手に動いていた。
残りの魔力を全部使って、
男の子を安全エリアにワープさせた。
私の体には、水攻撃の矢が
たくさん刺さっていた。
死なないって決めたのに。
ごめんなさい。
「私のこと忘れないでください」
あぁ、あの時言わなくてよかった。
これ以上、あなたに背負わせるなんて
できないから。
胸に閉じ込めた好きって気持ちも
言わなくてよかった。
先輩、私の気持ち届きませんように。
どうか、この願い叶いませんように。
あなたを守れる人でありたかった。
あなたの苦しいほどのやさしさも、
知っている。
何でも背負ってしまうから、
どうか忘れてください。
私と過ごした時間も。
さよなら愛した人。
・*・―――・*・―――・*・
泉口が死んだ。
俺は誰かを守れる強さを
お前を守れるほどの強さがなかった。
なぁミア。
俺は何百人ていう死を見てきたが
こんなにも辛くなったのは初めてだ。
お前が俺を認めてくれたから、
俺自身を嫌わずにいられたんだ。
せめてお前だけは、お前だけは
守ってやりたかった。
生きててほしかった。
おまえだけはずっとずっと
守ってやりたかった。
できることならずっと、
お前の笑顔を隣で見ていたかった。
カケル「あぁぁぁぁ」
泣いたのはいつぶりだろう。
お前には生きてほしかった。
隣にいたかった。
あなたを守りたかった。
お前を守りたかった。
ずっと君のそばにいたかった。
どんなに手を伸ばしても、
あなたには、お前には、届かない。
あなたが、お前が、
確かにここにいたこと
私は、俺は絶対忘れない。
*END*