こんにちは、
私は、秋田汐梨!
中3だよ。
なーんて、
挨拶してる
場合じゃなーい!
あ! ねえ、
ちょっと聞いてよ!
なんかさ、
変なとこに
来ちゃったんだよね。
*。・ 1時間前 ・。*
私は、親友の
川床明日香と
原宿にいた。
明日香は、
歴史オタク。
今も、歴史の話を
されている。
明日香「それでね・・・
とにかくすごいの!
織田信長!」
汐梨「へー、
イケメンなの?」
明日香「知らないよ!
あ、ちょっとトイレ!」
明日香がトイレに
行ってすぐ、
私の目の前を、
白と赤の毛色をした
1匹の犬が通った。
なに、あの犬!
明日香、
まだ帰って来ないよね?
追いかけてみよう!
タッ、タッ、タッ、
やば、壁!
ドンッ。
あれ?
痛くない・・・?
てか、
ここどこ?
そこは、さっきまでいた
原宿とは程遠い、
ただひたすら道と田んぼが
広がっているだけのところだった・・・
で、今に至るってワケ。
ひどくない!?
私、なんか悪いことした?!
パカッ、パカッ、パカッ、
馬の足音・・・?
??「おい、
娘、どうした」
汐梨「へ?」
見上げると、
かなりのイケメン!
??「俺は、
織田信長だ」
信長・・・?
まって、ここ、
戦国時代ってこと?!
汐梨「秋田汐梨です。
あの、気がついたら
ここにいて」
信長「気がついたら・・・?
まあいい。
とりあえず、
俺の屋敷にこい」
不思議そうな顔をした。
驚く程綺麗な顔。
信長って、
イケメンだったんだ・・・
そのとき、あの犬が
こっちに走ってきた!
汐梨「あ、あの犬!」
信長「知っているのか?」
少し厳しい顔。
なんか、
まずかったのかな・・・?
汐梨「あの犬を
追いかけてたら、
ここに来てて・・・」
信長「そうか、あれは、
俺の唯一の
本当の家族だ・・・」
汐梨「本当の?」
家族に、
本物か偽物かなんて
あるの?
信長「・・・俺の本当の名前は、
雨宮翔。
両親が火災で早くに死んで、
織田家の長男として育てられた。
あの犬は、俺の弟だ。
両親を助けるため、
俺と弟は火の中に飛び込んで・・・
あいつは、魂だけがのこり、
犬になったんだ」
そう言うと、
腕に残った火傷の跡を
見せてくれた。
汐梨「そう・・・
ねえ、翔って
呼んでもいい?」
信長「は?!」
汐梨「なんか、
そっちの方があってる!」
信長「・・・勝手にしろ」
(以下、信長→翔)
*。・ 織田屋敷 ・。*
うわー、
ここが翔の家?
でっかーい!
翔「汐梨の部屋はここだ。
俺は隣の部屋にいるからな」
汐梨「うん、
わかった!」
*。・ 汐梨の部屋 ・。*
唯和「汐梨さん、
こちらに着替えて下さい。
信長様からです」
この人は、翔の側近?
の、小原唯和さん。
なんか、近くで支える人
なんだって!
汐梨「翔から?
ありがと、唯和さん!」
私がそう言ったとたん、
唯和さんの顔色が
変わった。
唯和「なぜ、
それを知っている?」
汐梨「え?」
なんか、
まずかった?
翔「俺が教えたんだよ」
唯和「・・・そうでございましたか」
・・・?
えーと、
どういうこと?
翔「では、
俺はもう休む」
唯和「おやすみなさいませ」
汐梨「おやすみー」
シーン。
なんか、
気まずい・・・
会話、
なんか、会話・・・
唯和「・・・汐梨さんは
すごいです」
汐梨「え?
なにが?」
唯和「翔様が
本名を教えることなんて、
今までなかったんですよ」
汐梨「そうなの?」
唯和「ええ、ですから、
みなの前では
信長様と呼んでくださいね」
汐梨「了解!」
みんなの前では信長様、
みんなの前では信長様・・・
唯和「では、
私も部屋に戻ります」
汐梨「うん、
おやすみー」
じゃあ、私も
そろそろ寝よう。
なんか今日は
色々あって
疲れちゃった・・・
じゃなーい!
帰る方法
探さなきゃー!!
ガラッ
翔「汐梨、
もう寝たか?」
汐梨「翔?
ううん、
まだ起きてるよ」
翔「今日出会ったばかりだが、
簡単に人の心の壁を
破れるようなお前が
好きになった」
汐梨「え?」
翔「考えておいれくれ。
・・・もう遅い、
早く休め」
ガラッ
翔が、私を好き・・・?
今日会ったばかりなのに?
でも、でも・・・
* ――― * ――― *
ハッ。
汐梨「朝だ」
夢を見てた。
私が、翔って呼んでもいい?
って聞いたとき、
勝手にしろなんて
冷たいこと言いながら、
目を反らしたあとに見せた、
優しい笑顔。
それを思い出してた。
昨日、会ったばかり。
でも、翔が好き。
大好き。
翔のとこにいこう。
* ――― * ――― *
汐梨「翔ー?」
翔「ん・・・?
汐梨か」
汐梨「私、翔が好き。
だーい好き!」
翔「ありがとう。
だが、俺は明日から
戦に行く」
汐梨「待ってるよ」
いつまでも待ってる。
だって、
翔が大好きだから。
*。・ 次の日 ・。*
汐梨「行ってらっしゃいませ、
信長様」
翔「ああ、
行ってくる」
あーあ、
行っちゃった。
ん?
誰か見てる・・・?
わわっ!
めっちゃ美人!
汐梨「ねえ、
あの綺麗な人、
誰?」
侍女「あちらは、
信長様の正室の、
帰蝶様、
本名泉口美愛様です」
汐梨「へー」
ほんとに美人だなー。
てか、
「セイシツ」
ってなんだろう?
ま、いっか。
汐梨「あの」
美愛「え?」
汐梨「私、秋田汐梨っていいます!
よろしく、
美愛さん!」
侍女「口のききかたが
なってませんわ!
帰蝶様を本名で
およびするなんて!」
美愛「いいのよ、
汐梨さん、
ちょっとお話しません?」
*。・ 美愛の部屋 ・。*
美「汐梨さん、
あなたって
本当にすごいのね」
汐梨「・・・唯和さんにも
言われました」
でもさ、
今の時代・・・
じゃない、平成って、
みんなこんなもんじゃない?
昔の人は
違うのかな・・・
美愛「ところで、
あなたは
どこから来たの?」
汐梨「信じてもらえないかも
しれないけど、
私は未来から来たの。
平成って、今から400年?
500年?
ちょっとよく分からないけど、
それくらい未来から。
原宿ってとこで
信長様の犬を見つけて、
追いかけてたらいつのまにか」
美愛さんが
目を見開いてる。
そりゃそうだよね。
こんな話、簡単には
信じられない。
美愛「・・・そう、
私は信じるわ。
・・・ねえ、私の話も
聞いてくださる?」
私は無言で頷いた。
美愛「ありがとう。
私、本当は
信長様のことが好きなの。
でも、そんなことないって
ふりをしてしまう」
美愛さんも?!
こんな美人な人が
恋の悩みなんて・・・
汐梨「じゃあ、
私たちはライバルだ!」
美愛「らいばる?」
汐梨「私も信長様が好き。
同じ人を好きになった
友達同士を
ライバルっていうの」
美愛「?!
・・・そうね、
私たちは友達で
らいばるだわ」
*。・ 1か月後 ・。*
私と美愛さんは、
とっても仲が良くなった。
いつものように、
2人で話しながら
お茶を飲んでいると、
侍女「信長様が
ご帰還されます!」
侍女「帰蝶様!
ご準備を!」
美愛「・・・でも・・・
汐梨さんが行ったほうが
信長様も・・・」
侍女「何を申されますか!
あなた様は信長様の
妻でございますよ!」
美愛「・・・分かったわ」
え・・・?
妻・・・?
美愛さんが・・・?
うそ・・・
翔は、私のことが
好きだったんじゃないの?
もう、もう、
翔なんて知らない!
*。・ 夜 ・。*
トントン。
翔「汐梨、いるか?」
汐梨「・・・」
*。・ 次の日 廊下 ・。*
目の前から
翔がやってくる。
翔「汐梨!」
汐梨「・・・」
*。・ 1週間後 ・。*
翔「汐梨!!
いつまで
無視するんだ!」
汐梨「知らない!
奥さんがいるくせに!
美愛さんみたいに美人の!」
翔「・・・あいつは、
俺のことなんて
好きじゃない。
俺だってそうだ。
結婚なんて、
形だけのものだ」
汐梨「そう、だったんだ・・・
無視してごめんなさい。
でも・・・
これだけは聞いて!
美愛さんは、ちゃんと
翔のこと好きだよ!」
翔「は・・・?」
汐梨「私たち、
翔が戦に行ってる間に、
仲良くなったの。
美愛さん、翔に
冷たい態度をとっちゃう、
本当は好きなのにって言いながら
泣いてるの!」
翔「そう、か・・・
でも、俺は・・・」
汐梨「私から、
美愛さんに言ってみる。
嫌われちゃうかな・・・?」
翔「そんなこと・・・」
美愛「そんなこと、ない!」
汐梨「美愛さん?!」
うそ、今の、
聞いてた・・・?
どこから?
美愛「私が汐梨さんを
嫌いになることなんてないから、
安心して。
実をいうと、信長様が
好きになった汐梨って子は
どんな子なのか気になって
近づいたの。
今では、なぜかわかるわ。
だって、私が汐梨さんのこと、
大好きなんだもの!」
汐梨「美愛、さん・・・
うわーん!」
美愛「あらあら」
*。・ 1年後 ・。*
今は、1582年。
翔は、また明日から
戦に行ってしまう。
あ、ちなみに今、
私は翔の側室。
唯和「本日はどちらに
ご宿泊されますか?」
翔「そうだな、
本能寺あたりでいいだろう」
唯和「かしこまりました。
手配いたします」
本能寺?
どっかで
聞いたことがある・・・
どこだっけ・・・?
美愛「行ってらっしゃいませ」
汐梨「行ってらっしゃいませ、
信長様」
なんだろう、
なにかがひっかかる・・・
美愛「今回は、
明智の動きが
とても重要です。
上手くやってくれる
でしょうか・・・」
明智・・・?
明智、
本能寺・・・
――織田信長は、
明智光秀の裏切りによって、
本能寺で死んだんだよ――
そうだ、
本能寺の変。
いつか、
明日香に聞いた。
織田信長は、
翔は、
本能寺で
死んでしまう!
汐梨「まって、だめ。
本能寺はだめ・・・!」
美愛「汐梨?
どうしましたか?」
汐梨「私、未来から来たから
知ってる。
織田信長は、
明智光秀の裏切りによって
本能寺で死ぬ」
侍女「それは、
本当ですか?
汐梨様!」
美愛「すぐに、
信長様に!」
私も、そうしたい。
翔に、生きていて欲しい。
でも待って。
本能寺の変が
起こったのは、
1582年。
年もちゃんと
あってる。
それに、本能寺に
行かなかったとしても、
他のところで殺される
可能性だって
十分にありえる。
仮にここで
織田信長が
生きていたとすれば、
このあとの豊臣秀吉、
徳川家康はどうなる?
江戸時代が
来ないかもしれない。
平成だって、
こないかもしれない。
もしかしたら、
私はこの時代に
生きた人として、
生きられる可能性がある。
でも、
お父さん、
お母さんは?
明日香は?
存在しなくなって
しまうかもしれない。
それは、
絶対にだめ!
汐梨「だめよ、美愛。
歴史を変えるわけには
いかない」
美愛「でも・・・!」
汐梨「ねえ、美愛。
日本は長い歴史の
積み重なりでできているの。
それを、私たちの手で、判断で、
崩してしまう訳にはいかない」
美愛「そう、よね・・・」
ねえ、翔。
私、翔のお陰で
いろんなことを知れたよ。
冷酷なんて言われてる
織田信長は、
本当は優しい人だってこと。
不器用だってこと。
イケメンだってこと笑
それから、
恋っていうのは
楽しくって、
嬉しくって、
同時に辛くて
悲しいってこと。
翔、大好きだよ。
ずっと忘れない。
従者「報告します!
光秀が裏切りました!
信長公は戦死!
光秀は逃走を続けています!」
翔、さようなら。
ここに来たこと、
後悔はしていない。
でも・・・
明日香に会いたい。
平成に、
帰りたい。
ピカー!
汐梨「キャー!」
* ――― * ――― *
??「・・・り、汐梨!」
汐梨「・・・うわああ!
明日香?!」
ここは、
戦国時代じゃない。
平成の、原宿。
明日香「もー、
ボーッとしすぎ!
でね、信長がね・・・」
汐梨「信長は、
優しいイケメンだったよ」
明日香「え?」
汐梨「なんでもなーい!」
タッ。
信長様の弟の犬が
走り去った。
あれ?
あの3人って・・・
*。・ 10年後 ・。*
汐梨「もう25歳に
なっちゃったねー」
明日香「いーじゃん、
汐梨には
彼氏いるんだからー」
汐梨「えへへ、
今度京都で
wデートしてきまーす!」
明日香「京都の名所といえば・・・?」
汐梨「もち、
京都市上京区、
阿弥陀寺!
信長の墓!」
明日香「せーいかーい!」
私はすっかり、
織田信長の大ファン。
ところで、
wデートの相手とは・・・?
*。・ 京都市上京区 阿弥陀寺 ・。*
??「汐梨、いつまで
お参りしてるんだ?」
汐梨「翔!
ちょっと待ってよー」
??「もう、
置いてくよ?」
汐梨「あ!
美愛まで!」
美愛「唯和なんて、
もう行っちゃったよ!
ちょっと唯和~」
あら?
どこかで聞いた名前?
なんて。
汐梨「はいはい、
美愛さんは唯和に
ゾッコンだことでー」
美愛「そっちこそ
翔とラブラブのくせに!」
翔・唯和「いくぞ!」
汐梨・美愛「はーい!」
どんな困難も、
私たち人間は
越えることができる。
私と翔、
美愛に唯和は、
"時空"という名の
高い壁さえも
越えることができたのだから。
*end*